「子どもは早い方がいいよ」ってアドバイスするな(あなた基準の善意は、時に刃物になる)

結婚がらみの話が出た時に、
二言目に誰かが言う「料理できるの?頑張って練習しなきゃねえ」
三言目に誰かが言う「子どもは早い方がいいよ~。」

 

結婚したら女が料理を作って毎日家にご飯をそろえて待っていなければならない、と、誰が決めた?

 

子どもは女性全員が産むことができて、女性全員が産みたいものだと、どのアンケートで判明した?

 

それらの疑問を喉の奥でかみ殺して、
「やばい~料理なんて目玉焼きしかできないです~!練習しなきゃですね~」と焦ってみせる。
「ですよね~、年取ってから産むと仕事で大事な時期に産休とかなっちゃいますもんね~」と悩んでみせる。

私が結婚や出産についてどう思っているかなんて、彼らは気にしていないし、分かってもらうつもりもないから。

 

これは私の話だけれど、
例えば結婚した時に、私一人で料理を作って貞淑におうちで待っててお帰りなさいダーリンなんてそもそもできると思っていないし、できないことは交際相手にも伝えている。彼は度が過ぎる善人なので「わが家は仕事優先だからね」と言ってくれる。

例えば結婚した時に、子どもをすぐに持ちたいとは思っていない。時間とお金はまず自分に使いたいし、女性だけれどそもそも子供ができる体なのかどうかも調べていないのでわからない。ゆくゆく欲しいと思う時も訪れるのかもしれないけれど、その時のことを今は考えていない。

 

だからと言って、専業主婦になって仕事で疲れて帰ってきた夫をおいしい料理でねぎらってあげたい、という女性の夢を否定するつもりも毛頭ない。そこに「この人が好きで、役に立ちたい」とか「誰かを喜ばせてあげたい」とか「家事のプロになりたい」とか、明確な意思があるなら、素晴らしい夢だと思う。

子どもを持ってあたたかい家庭を築いている大人たちのことは心から尊敬するし、家族は素敵なものだなと思う事も沢山ある。

 

単に、それらが「私の夢」ではないだけで。

 

えー、でも、やっぱり料理できて笑顔で振る舞ってあげられる女性って、素敵じゃん。
えー、奥さんには甘えたいなあ。
えー、子どもは可愛いし、いたほうがいいよ。誰かのために生きる幸せがわかるよ。
えー、お金と時間を自分に使いたいって、そんな考え方するなら子ども作らない方がいいな。

 

この世界には、「あなた」がいて、「私」がいる。あなたの常識は、もちろん私の常識ではないし、世間の常識でもない。一般人が一般論を語るな。「私は」で語れ。

 

あなたが、料理できる女性が、甘えさせてくれる女性が素敵だと思うなら、その素敵な女性を探して勝手に結婚してくれ。
あなたが、誰かのために生きる幸せを味わいたいなら、勝手に味わっていてくれ。
あなたが、「そんな考え方するなら子ども作らない方がいい」と言おうが言うまいが、私や私のパートナーが子どもを作れるかどうかも、私が子どもを作りたいかどうかも、変わらない。

 

これだけ怒っているけれど、こうした"アドバイス"をくれる方たちは、完全なる善意をもって発言してくれている。きっと彼らは、女性はこういう方が素敵だと思うから、そうなったほうがいいよとアドバイスしてくれている。子どもは遅いと苦労するから、早い方がいいよと言ってくれている。

 

その善意には感謝するけれど、小さじ一杯分だけでいいから、わずかの想像力を持ってほしい。ここにいるのは名前のない二体ののっぺらぼうではない。あなた独自の意見を持ったあなたと、私独自の意見と体を持った私だけである。

 

あなた基準の善意が、もしかすると、誰かを傷つけているかもしれない。私基準の善意が、もしかすると、あなたを傷つけるかもしれない。
世の中は私たちが思っているよりずっと広くて、奥行きがあって、精細なものだから、
毎日毎秒、そう思って生きたい。