今年のM-1グランプリは人生だった

終わってから2時間たっても動悸が止まらない。ため息も止まらない。

 

今年のM-1グランプリは人生だった。

 

会場の空気感なんだろうか、出場者のステータスなんだろうか、私が年をとったのだろうか。人生であり、そして時代について考えた(壮大)。和牛、ジャルジャル霜降り明星スーパーマラドーナ。みんなの人生について考えた(勝手)。

 

ラストイヤー40歳、M-1のことだけを考えてネタを作ってきたスーパーマラドーナ武智。松本人志に「何でこのネタやったん!」と怒られて絞り出した「すいません」。もうそれしか言えなかったよな。全力で作って全力でやったんだもん。これだけ考えて40歳まで生きてきたんだもん。私26歳のいまでこんだけ染みてるのにこれ40歳になった時に顔中塩水だらけにしないで観られる気しないよ。

 

トム・ブラウンに対する上沼恵美子さんの「未来のお笑いって感じだった、ごめんね、私の頭は古いから」というコメントから感じられる懐の広さにも心がやられた。私上沼さんの歳になって自分が理解できないお笑いされてごめんね私の頭は古いとか絶対言えねえよ!!大御所すげえよ〜〜!!!

 

テンポよく工夫された「例えツッコミ」による"近代的な漫才"を披露して空気をかっさらっていった霜降り明星。圧倒的に若い勢いと頭の回転。ひとネタひとネタボケでもツッコミでも笑えるから6秒動画にもできるし、正統派漫才としても4分観られる。最近の若い子たちの飲み会のやり取りの中でちょっと考えて放つ例えツッコミのお手本にもなる。

 

でその後の和牛。前半ヒヤヒヤドキドキ「でも和牛だからこっから面白くなるんだよな」と期待させて最高のオチ。どっしり構えたベテランの安定感。かっこいいよ川西さんと水田さん。超かっけえ。

 

だがしかしなんだよなあ〜〜。

 

きっと多くの人が今年は和牛が優勝すると思ってたし、優勝してほしいと思っていた。ファイナル3組目の霜降り明星が、七代目だけひょうきんな校長先生で会場をどっと沸かせるまでは。

 

確固たるこだわりを持ってずっと同じスタイルを貫いてきたジャルジャル。更にその上で、水田のひねくれボケを1ミリずつ大衆に寄せながら熟成させてきた和牛。

彼らの横を、圧倒的な若さと勢いと才能で、1992年生の霜降り明星がぶち抜いて行った。

優勝が決まった瞬間、いやったああぁぁぁぁあ!と叫ぶ霜降せいやの、キラッキラの満面の笑み。うおおおおおと雄叫びを上げた後笑顔で感極まる粗品。昨年のとろサーモンのただただ感極まる重みとは対照的な、若さの輝き。そして、その後ろで拍手しながら「良かったねえ」とほほ笑む和牛川西。これが大人だ…人生だ…。

 

一人も名前が挙がらなかったジャルジャル後藤の、一瞬カメラに写った苦い顔も印象的だった。自分のスタイルでやり切った、爪痕も残した、めちゃくちゃウケた、だけど審査員から名前はひとつも呼ばれなかったラストイヤー。

 

若手に追い越されながらも来年もチャンスがある和牛、M-1は引退となるがキングオブコントに優勝しているかまいたちに比して、スーパーマラドーナジャルジャルは、どこかで「これが俺たちの人生」という気持ちに落ち着くんだろうか。それとも、一生この経験を胸にしこりとして抱えていくんだろうか。それとも、決勝に勝ち進んだ名誉を踏み台に別の目標を見つけるんだろうか。

 

芸人としてしっかり売れてる。ネタに手応えもある。だけど、M-1に優勝していない。スーパーマラドーナジャルジャルにとってそれがどんな気持ちなのか、私にはわからない。

さんざん練習してきた。舞台も何千回、何万回と踏んだ。ボケにもツッコミにも安定して自信がある。だけど、勢いのある若手に負けた。空気を持っていかれた。そして、ヤツらは面白い。和牛にとってそれがどんな気持ちなのかも、私にはわからない。

 

M-1グランプリに人生を見た。

芸人の皆さん、勝手にすみません。

 

そして思う、霜降り明星は私と同級生の92年生まれ。

 

私も頑張ろう。会社員がんばる。私にはまだまだ若さと輝きがある。

ジャルジャルや和牛のように熟成される頃には、執行役員にでもなってやる。

ありがとう、M-1グランプリ